突発性難聴|めまい・ふらつき 

めまいから始まった突発性難聴は、重症のことが多いです。めまいは、ぐるぐるしためまいで始まって、吐くこともあります。

通常は、3日程度でぐるぐるしためまいは治りますが、一週間たってもぐるぐるめまいが治らない時は、早めに専門的な鍼治療をすることも効果があると思います。

グルグルめまいから始まる突発性難聴は、全域で聴力が低下しているケースが多く、ステロイドで改善しないことがあります。

1. 突発性難聴とめまいの予後の関係

突発性難聴において、めまい(随伴症状としての前庭症状)の有無は、聴力の回復(予後)を左右する極めて重要な指標(予後不良因子)です。めまいを伴う症例は、伴わない症例に比べて聴力の回復が明らかに悪いとされています。

1-1. めまいの有無による回復率の差

  • 回復率の低下: めまいを伴わない患者の聴力回復率は約55%であるのに対し、めまいを伴う患者の回復率は約29%に低下するという報告があります。
  • 高音域への影響: めまいがある場合、特に高周波音域(高音域)での回復が小さくなる(悪くなる)傾向があります。

1-2. 「難聴の重症度」と「めまい」の独立した関係

  • 重症度との相関: 難聴が高度であるほどめまいの合併率は高くなります。5周波数平均聴力レベルが90dB以上の「Grade 4(最も重度)」では、約57%〜67%の症例にめまいが合併します。
  • 同じ重症度での比較: 「難聴が重いからめまいが起こり、その結果予後が悪い」というだけではありません。同じ難聴の程度(重症度)の症例同士を比較しても、めまいを伴う症例の方が、めまいを伴わない症例よりも聴力予後が明らかに悪いことが実証されています。
  • 独立した予後因子: 2001年の全国疫学調査データを用いた多変量解析において、「初診時の聴力レベル」「発症から来院までの日数」「年齢」に並んで、「めまいの有無」は独立して聴力予後(固定時聴力レベル)に関与していることが明らかになっています。

1-3. めまいの性質(回転性・非回転性)と予後

  • めまいの性状が「回転性(グルグル回る)」か「非回転性(フワフワ、フラフラなど)」かという違い自体は、聴力予後(転帰)には直接関係しないという結果が得られています。めまいの種類に関わらず、めまいという前庭症状を伴うこと自体が予後不良の指標となります。

1-4. なぜめまいを伴うと予後が悪いのか(病態的背景)

  • 障害範囲の広さ: めまいを伴う症例は、障害が聴覚を司る「蝸牛」だけでなく、隣接する平衡感覚の「前庭(球形嚢)」や「半規管」にまで広く波及している(内耳全体の障害である)ことを示唆しています。
  • 内耳出血などの合併: 3テスラMRI(3D-FLAIR画像)を用いた検査において、めまいを伴う重症例では内耳液に高信号(微細な内耳出血や、血管の透過性亢進によるタンパク漏出)が認められる割合が高く、この画像所見がある症例もまた、独立した聴力予後不良因子となっています。

2. めまいが治らないことはあるか?

突発性難聴に伴うめまいは多くの場合、自然に消退(軽快)しますが、治らないこともあります。一か月たっても、めまい良くならない場合は注意が必要です。めまい止めのお薬だけでは解決しないケースもあるので、お薬とは違ったアプローチをすることも効果的だと思います。

比較的効果があるのは、運動療法です。特にポールウオークがおすすめです。

3. めまいは、いつまで続くのか? 

突発性難聴に伴うめまいの持続期間は、「急性期の激しいめまい」「回復期のふらつき」「長期化・再燃するケース」の3つの段階に分けて考えることができます。

3-1. 急性期の激しいめまい(数日〜1週間程度)

発症直後の最もつらい時期です。

  • 2〜3日程度: 静かに横になって安静を保つことで、激しい回転性めまいや激しい吐き気、眼振(眼球の不随意な揺れ)は通常2〜3日で落ち着いてきます。ただし、内耳動脈の塞栓(詰まり)などが原因で強い酸欠状態が起きている場合は、激しい症状が約1週間続くこともあります。
  • 3〜4日後: 多くの場合は発症から3〜4日後には、ふらつきはありつつも吐き気を伴わずに歩行できるようになります。
  • 1週間後: 明るい場所で目を開けている限りは、1週間ほどで日常生活を問題なく送れる程度に回復します。

3-2. 回復期のふらつき・浮動感(1〜2ヶ月程度)

急性期の激しい回転性めまいが治まった後、体を動かしたり頭の位置を変えたりした時に生じる、フワフワするようなふらつきや誘発性のめまいの時期です。

  • これらは、ダメージを受けた内耳の左右バランスの崩れを脳が補う「前庭代償(ぜんていだいしょう)」という働きによって、通常は1〜2ヶ月で自然に消退(軽快)していきます

3-3. 長期化・再燃するケース(数ヶ月〜1年以上)

突発性難聴のめまいは、原則として1回限りで繰り返さないのが特徴です。しかし、以下のような要因で症状が長期化・再燃することがあります。

  • 高齢者の場合: 脳のバランス代償機能(前庭代償)に時間がかかるため、めまいや歩行時のふらつきが1年以上、場合によっては3〜4年にわたって持続・遷延することがあります。
  • 前庭障害が残存した場合: バランスを司る前庭の障害が強く、半規管麻痺(CP)が固定して残ってしまった場合、長期的なふらつきの原因になります。
  • 二次的な病態の合併(再燃): 一度めまいが軽快した後に、剥がれ落ちた耳石が半規管に迷入する「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」や「内リンパ水腫」を二次的に合併(続発)し、再び執拗なめまい発作を繰り返すようになるケースがあります。調査では、めまいを伴う突発性難聴の罹患後、50.0%がBPPV、40.0%が内リンパ水腫を続発したと報告されています。

4. ふらつきが治らないことはあるか? 

突発性難聴に伴うふらつき(平衡障害)が治らない(長期的に残る・慢性化する)ことはあります

突発性難聴で生じるめまいやふらつきの多くは一過性であり、基本的には時間の経過とともに軽快していきますが、一部の患者では症状が数ヶ月から年単位で長引いてしまうケースが存在します。その具体的な原因として、以下の3つの要因が挙げられます。

ふらつきが長期化・残存してしまった場合は、一般的なめまい薬(抗めまい薬や対症療法の薬)だけでは効果が乏しいことが多く鍼治療を試すもの良いかもしれません。

4-1. 前庭代償の遅れ・不全(特に高齢者に多い)

ダメージを受けた内耳の左右バランスの崩れを、脳(中枢)が学習してバランスを補正する仕組みを「前庭代償(ぜんていだいしょう)」と呼びます。

  • 高齢による影響: 高齢者の場合、この脳による代償機能が十分に働かなかったり不完全になりやすいため、ふらつきが残りやすい傾向があります。そのため、特に高齢の突発性難聴患者において、発症後1年以上にわたってふらつきやめまいを訴え続ける症例が報告されています。

4-2. 内耳の前庭機能障害(半規管麻痺)の固定

  • 前庭機能の低下: 突発性難聴のめまいやふらつきが強い症例では、内耳の平衡感覚を司る機能(半規管や耳石器)のダメージが深く残ります。ある調査では、めまいを伴う突発性難聴を患った後、長期経過後も66.7%に半規管麻痺(CP:カロリックテストによる反応低下)の残存が確認されており、この機能低下が回復せずに固定してしまうことが長期的なふらつきの原因となります。

4-3. 二次的な病態の合併(続発症)

最初の激しいめまいやふらつきがいったん落ち着いた後、再び執拗なふらつきやめまいがぶり返すことがあります。めまいを伴う突発性難聴罹患者を対象とした調査では、その後の「遷延するめまい(治らないふらつき)」の具体的な原因として、以下の二次的な合併症が高い割合で確認されています。

  • 続発性BPPV(良性発作性頭位めまい症) [約50%]: 内耳へのダメージにより、耳石器から剥がれ落ちた耳石が半規管に迷入することで起こります。これにより、頭を動かしたり寝返りをうったりするたびに、ふらつきやめまいが誘発されるようになります。
  • 続発性内リンパ水腫 [約40%]: 内耳の血流障害やウイルスの影響によってリンパ液の調整機能が壊れ、内耳に「水ぶくれ(水腫)」が発生する病態です。
  • 前庭代償不全 [約10%]: 脳によるバランスの補正機能(前庭代償)がうまく完成しない状態です。

5. 突発性難聴 めまい はなぜ起こるか?

私たちは、病院に入院して治療をしても、良くならなかった患者さんが多くみえます。おおむね4割の患者さんがめまいから発症されています。

私たちは、耳鼻科のお医者様とはちがった方向性で検査をを治療をしています。突発性難聴で、めまいの起こる原因は、聴覚を司る「蝸牛」だけでなく、平衡感覚を司る「前庭」や「半規管」まで及んだためです。

内耳まで血液を運ぶ重要な椎骨動脈の血流が低下しているケースが多いので、椎骨動脈の血流を改善する鍼治療で効果が上がるケースが多いです。

5-1. 内耳の広範囲な障害

突発性難聴は、何らかの原因で内耳の有毛細胞が障害される疾患ですが、めまいを伴う場合は、蝸牛系(聞こえ)と前庭系(バランス)の両方が同時に障害を受けていると考えられます。

  • 障害の波及: 難聴が全周波数に及ぶような重症例では、蝸牛に近い「球形嚢(耳石器の一部)」の障害がほぼ必発であり、さらに隣接する半規管などへ順次炎症や障害が波及していくことで、激しいめまいが引き起こされると想定されています。

5-2. 内耳の循環障害(血管性病変)

内耳に血流を送る「迷路動脈」や、その元となる「前下小脳動脈(AICA)」に、血栓や塞栓、血管攣縮などの血流障害が起こることが原因の一つと考えられています。

※「迷路動脈」・「前下小脳動脈(AICA)」は、椎骨動脈から枝分かれする主要な血管です。

  • エネルギー不全(内耳梗塞): 内耳を栄養する動脈が詰まると、蝸牛・耳石器・三半規管への血液供給が途絶え、内耳全体が「酸欠(エネルギー不全)」の状態になります。これにより、難聴と同時に強い回転性めまいが生じます。

5-3. 内耳出血

近年、高解像度MRI(3D-FLAIR法)による検査で、突発性難聴の患者の患側内耳に高信号が認められるケースがあることが分かりました。

  • 微細な出血: この信号は、内耳液内での微量な出血や、血管透過性の亢進による蛋白濃度の症状を示唆しています。このような「内耳出血」が起こると、リンパ液の組成が乱れ、感覚細胞が強く障害されるため、めまいを伴いやすく、聴力予後も不良となる傾向があります。

5-4. めまいの特徴と注意点

  • 単発性: 突発性難聴に伴うめまいは、原則として1回限りの発症であり、メニエール病のように発作を繰り返すことはありません。
  • 性質の違い: 難聴の前や同時に起こるめまいは「回転性(グルグル回る)」が多く、難聴の後に起こるめまいは「動揺感や浮動性(フワフワする)」が多いとされています。
  • 予後との関係: めまいを伴う例は、伴わない例に比べて内耳の障害範囲が広いと推測されるため、一般に聴力の回復が悪い(予後不良)とされる重要な指標となります。

めまいで始まった突発性難聴は、早めに対応を!

広い周波数で、高度の難聴を伴うことが多いのです。特に高音域が低下するとめまいで始まることが多いです。

お医者様は、めまい止めでめまいを抑えてくれます。ただ、めまいの原因(おそらく前庭の血流障害)が改善しないと、めまいが続くことが多いです。

私たちは、以前から、むち打ちの患者さんが同じようなめまいの経過をとることに注目してきました。もし、お医者様の対症療法で改善しなければ、違ったアプローチも効果的だと思います。


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