ホスト:さて、いただいた資料、月刊エントーニの「どう見分ける外リンパ瘻」と「外リンパ瘻の診断と治療」、それから「森上鍼灸整骨院の治療に対する考え」これらをもとに、今回は外リンパ瘻について深掘りしていきたいと思います。
ゲスト:はい。
ホスト:これ、あの内耳のリンパ液が中耳に漏れちゃうという状態ですよね。
ゲスト:ええ、そうです。
ホスト:で、今回のミッションはですね、このまあ診断が難しいとされる外リンパ瘻。その核心に迫りたいと。症状の多様性から、診断の難しさ。そして・・・えっと最新の診断法まで、専門家の視点も交えつつ、あなたにとって本当に重要なポイントは何なのか、これを抽出していければと思います。
ゲスト:ええ、おっしゃる通り。症状だけだと、あの突発性難聴とかメニエール病とかともう区別がつきにくい。
ホスト:うーん。
ゲスト:ですから、診断には、まあ、かなりの慎重さが求められるというのが、ええ長年の課題でしたね。
ホスト:なるほど。ではまず基本的なところから。症状ですね。難聴、めまい、耳鳴り。これが三大症状と言われますけど。
ゲスト:ええ。
ホスト:全部が揃うとは限らないと。むしろ難聴だけというケースが8割以上なんで報告もあるんですね。
ゲスト:そうなんです。はい。
ホスト:で、「ポン」という音とか、水が流れるような耳鳴り。こういうのが特徴的って言われることもありますけど、資料を読むと実際はそんなに多くないみたいですね。
ゲスト:ええ、まあ、典型的と言われる割には頻度は低いですね。
ホスト:むしろもっと注目すべきは、変動する難聴。例えば低い音が聞こえにくかったのが、急に高い音が聞こえにくくなったりとか。
ゲスト:そうですね。あるいはその逆とか。
ホスト:あとは、重いものを持つとか。そういうまあ日常的な動作でめまいが誘発される。これがあなたが「もしかして」と疑うサインかもしれないと。
ゲスト:まさに、原因も本当に様々でして、頭を打ったとか、あとは気圧の変化ですね。潜水、飛行機。
ホスト:ああ。
ゲスト:それからくしゃみ、力んだりとか。
ホスト:なるほど。
ゲスト:グトヒュールが提唱した考え方がありますね。インプロージブ。外からの圧で内側に破れるパターンと、エクスプロージブ、咳とか力みで、こう、内側からの圧、髄液圧が上がって外に破れるパターン。
ホスト:ふんふん。インプロージブとエクスプロージブ。
ゲスト:ええ、この2つが基本の考え方になります。あと、お子さんだと原因不明の髄膜炎を繰り返す背景に、実はこの外リンパ瘻、特に髄液が漏れてるケースが隠れてることもあると言われていますね。
ホスト:なるほど。それで、やっぱり診断が難しいというのが大きな壁だったわけですね。
ゲスト:そうなんです。
ホスト:従来よく行われていたのが漏孔症状を見る検査ですか。
ゲスト:ええ、そうです。外耳道、耳の穴からあるいは体の中から圧力をかけてみて。
ホスト:はい。
ゲスト:めまいとか眼振、これが出るかどうかを見ると。
ホスト:どうやって圧力をかけるんですか?
ゲスト:あのーニューマティックオトスコープで耳の中からシュポシュポと圧をかけたり。
ホスト:へぇ。
ゲスト:あるいは鼻をつまんでうんといきんでもらうバルサルバ法とか。
ホスト:なるほど、バルサルバ法。
ゲスト:ええ、もし漏孔、つまり漏れる穴があれば、その圧力変化が内耳に伝わりやすいだろうという理屈です。
ホスト:ただ、この検査、信頼性がちょっと微妙というか・・・
ゲスト:まあ、そうですね。
ホスト:陽性率が報告によって13%から高いものだと71%まで。すごく幅がありますよね。
ゲスト:ええ、ありますね。
ホスト:だから陽性でも陰性でもこれだけで確定はできないと。あくまで参考所見の一つという感じだったんですね。
ゲスト:そういう位置づけですね。画像診断、CTとかMRIも残念ながら現状ではなかなか決め手にはなっていないんです。
ホスト:そうなんですか。
ゲスト:CTで内耳に空気が見えるピデーモラバリンスっていう所見があればかなり有力なんですけど、これは非常に稀で。
ホスト:うーん、稀なんですね。
ゲスト:MRIでそのリンパ液の漏れ自体が見えることも期待されたんですが、これもまあ限定的です。
ホスト:診断がここまで難しいとなると、治療に進むのも大変ですよね。何かこう決定打が欲しいと思っていたところに、近年大きな進展があったわけですね。
ゲスト:ええ、まさに。
ホスト:それがCTP検査。「コクリントモプロテイン」。これは外リンパ漏診断における、まあ、ゲームチェンジャーと言ってもいいかもしれません。
ゲスト:全くそう言っていいと思います。CTPというのは外リンパ、つまり内耳のリンパ液に特異的に多く含まれるタンパク質なんです。
ホスト:はい。
ゲスト:血液とか髄液にはほとんど含まれていない。
ホスト:ほう。
ゲスト:なので、鼓膜に少しだけ穴を開けて中耳を生理食塩水で洗って、その洗浄液を回収するんです。
ホスト:ええ。
ゲスト:その液の中にこのCTPが高い濃度で検出されれば、「ああこれは外リンパが中耳に漏れてるなぁ」という客観的な証拠になるわけです。
ホスト:なるほど、客観的な証拠。
ゲスト:ええ。
ホスト:しかもこれ、手術室とかじゃなくて、外来で局所麻酔でできる。
ゲスト:そうなんです。低侵襲で。
ホスト:体への負担も少ないと。で、2022年には保険適用にもなった。
ゲスト:ええ、なりました。
ホスト:これは大きいですね。これで今までは疑い例だったのが、外リンパ瘻確実例というふうに診断できるようになった。あなたにとっても治療方針をどうするかという上で非常に重要ですよね。
ゲスト:ええ、非常に大きな進歩です。ただ、もちろん注意点もあってですね。
ホスト:と言いますと?
ゲスト:例えば、中耳炎があるとその炎症によって中耳自体でCTPが作られちゃうことがあるんです。
ホスト:ああ、なるほど。
ゲスト:そうすると外リンパが漏れてなくても検査結果が陽性になってしまう可能性が指摘されています。
ホスト:うーん、注意が必要ですね。
ゲスト:ですから、CTPの結果が全てというわけではなくて、やはり症状とか他の検査所見と、こう合わせて総合的に解釈することが大事になりますね。万能ではないということです。
ホスト:なるほど。理解を深めるために、発症のきっかけ、要因に基づいたカテゴリー分類というのも見ておきましょうか。
ゲスト:ええ。
ホスト:1が外傷。2が潜水とか飛行機みたいな外からの圧、外因性圧外傷。3が鼻かみとか力みみたいな内からの圧、内因性圧外傷。で、4が誘因不明特発性。
ゲスト:はい。
ホスト:全国調査だとこの特発性が約半数を占めるなんて結果もあるんですね。
ゲスト:そうなんです。そして、その誘因不明というのがまた診断を難しくしている非常に厄介な点ですね。
ホスト:うーん。ご本人も気づかないような些細なきっかけが実はあったりするのかもしれないですね。
ゲスト:かもしれませんね。
ホスト:そしてもう一つ、ちょっと違う角度からの視点として、森上鍼灸整骨院の臨床経験という資料がありました。
ゲスト:はい。
ホスト:標準的な耳鼻科の治療でなかなか良くならない方とか。あるいは手術を受けたけど、まだ不調が残っているという方がまあ来院されると。
ゲスト:ええ。
ホスト:そういう方々に対して、鍼灸治療でその全身の過度な筋肉の緊張を緩める。そうすることで「髄液圧の急激な変動を抑える」というアプローチを取られていると。
ゲスト:なるほど。
ホスト:それが結果的に症状の改善とか自然治癒につながるケースがあるという報告なんですね。これは特に原因がはっきりしない特発性も含めて、外リンパ瘻とその髄液圧の変動との関連。これを考える上で、標準治療とはまた違った興味深い視点だなと思いました。
ゲスト:ええ、非常に興味深いですね。髄液圧との関連というのは、以前から指摘はされていましたから。
ホスト:さて、今回の深掘りでこう、見えてきたこと。それは外リンパ瘻というのがいかに多様な症状を示して、診断に本当に苦労してきたかということ。
ゲスト:ええ。
ホスト:しかし、CTP検査という客観的な診断の光が差し込んできたこと。
ゲスト:そうですね。
ホスト:そして鍼灸のように、また異なるメカニズム、特に髄液圧という観点からアプローチする考え方もあるということ。このあたりが、あなたにとっての重要なポイントになってくるでしょうか。
ゲスト:そう思います。CTP検査は本当に大きな進歩ですが、それでもやはり診断とか治療方針の決定というのは、症状・きっかけ、そして各種検査結果を丁寧に組み合わせて総合的に判断していく必要がある。
ホスト:うんうん。
ゲスト:CTPが陰性だったからといって、「じゃあ絶対外リンパ瘻じゃない」とも言い切れないという点も、まあ忘れてはいけない点ですね。
ホスト:なるほど、奥が深いですね。では最後に、あなたに一つ問いを投げかけさせてください。
ゲスト:はい!
ホスト:これだけ診断が難しくて、誘因不明とされるケースも多い外リンパ瘻。あなたの周りで、あるいはもしかしたらご自身で経験されている、原因がはっきりしない、繰り返すめまいとか、良くなったり悪くなったりする難聴、その中にほんの少しかもしれませんが、この外リンパ瘻が隠れている可能性はないでしょうか?
ゲスト:うーん。
ホスト:そして、CTP検査のような客観的な指標を持つ標準的な医療と、鍼灸のように髄液圧など、また違ったメカニズムに働きかける可能性のあるアプローチ。これらは今後、それぞれどのような役割を担い、あるいはどう連携していく可能性があるのか。この深掘りが、あなた自身の探求をさらに一歩深める、そんなきっかけになれば幸いです。
※出典1 全日本病院出版会 ENTONI No.308 「どう見分ける?外リンパ瘻」
※出典2 全日本病院出版会 ENTONI No.94 「外リンパ瘻の診断と治療」
※出典3 森上鍼灸整骨院 「治療に対する考え」