脊髄小脳変性症の鍼治療は、なぜ「保険」が効かないのですか?|国の基準と、私たちが「技術」で選ばれる理由

「リハビリと薬以外に、何かできることはないか…」 「鍼治療が良いと聞いたけれど、毎回自費だと続けるのが大変…」

脊髄小脳変性症(SCD)と診断され、進行への不安を抱える中で、そのようにお悩みの方は少なくありません。「病院と同じように、鍼治療も保険で安く受けられたら…」そう思われるのは当然のことです。

しかし、結論から申し上げますと、脊髄小脳変性症に対する鍼治療は、健康保険の対象外(自費診療)となります。

なぜ、国はこれを保険として認めないのでしょうか? そこには、単なる「予算」の問題だけでなく、「国の医療制度の限界」と、だからこそ私たちが提供できる「オーダーメイド治療(技術)の価値」という深い理由があります。

この記事では、少し専門的な医療制度の裏側と、それでも多くの患者様が「自費でも当院の治療を選ばれる理由」について、包み隠さずお話しします。

1.鍼治療は「規格化」できない職人技だからです

鍼治療は「職人技」で、鍼灸師によって技量が違うため、規格化できません。

日本の保険制度(標準治療)には、一つの絶対的なルールがあります。 それは、「全国どこでも、誰がやっても、同じ結果が出る治療(規格化された商品)」でなければならない、ということです。

神経内科で処方されるお薬(セレジスト/タルチレリン等)であれば、どの先生が処方しても成分は同じです。
しかし、鍼治療は違います。

  • 鍼を打つ深さ・角度
  • 指先の感覚
  • その日の体調に合わせたツボの選び方

これらは、術者(鍼灸師)の技量によって、結果が天と地ほど変わります。特に脊髄小脳変性症のような複雑な疾患では、画一的なマニュアル治療では太刀打ちできません。

国としては、このように「再現性がなく、術者のレベルに左右される職人技」に、一律の保険点数をつけることができません。これが、保険適用にならない最大の理由です。

2.国の基準では「対症療法」としても認められていない現実

さらに厳しい現実をお伝えしなければなりません。
現在の国の基準では、脊髄小脳変性症に対する鍼治療は、根本治療としてはもちろん、「症状を和らげるための治療(対症療法)」としても、公式には認められていません。

『脊髄小脳変性症のすべて』や『すべてわかる神経難病医療』といった専門書に基づいても、現代医学における標準的な治療は「リハビリテーション」と「投薬」が中心です。 鍼治療が、ふらつきや呂律(ろれつ)の回りにくさにアプローチできる可能性があっても、それを裏付ける「誰がやっても必ず効くという大規模なデータ(エビデンス)」が、国の基準においては不足しているのです。

そのため、現段階では保険制度の枠組みに入れることができないのが実情です。

3.もし鍼が保険になったら…「神経内科の薬」が貰えなくなるリスク

もし仮に、将来的に鍼治療が「療養費(保険)」として認められたとしても、患者様にとって大きなデメリットが生じる可能性があります。

日本の医療制度には「混合診療の禁止」に近いルールがあり、「同じ病気に対して、病院の治療と、鍼灸の保険治療を同時に受けることは原則できない(または制限される)」というリスクがあります。

もし、脊髄小脳変性症の治療として鍼の保険を使ってしまった結果、 「では、神経内科でのセレジストの処方は自費で払ってください」 と国から言われてしまったら、本末転倒です。

脊髄小脳変性症において、神経内科医による経過観察と投薬管理は絶対に必要です。 私たち鍼灸師も、病院での治療(標準治療)が最優先であると考えています。だからこそ、病院の治療を邪魔しない「自費診療」という形が、現時点では患者様を守ることにもつながるのです。

4.【重要】「二次的な痛み」がある場合は、保険が使える可能性があります

ここまで「保険は効かない」とお伝えしましたが、実は例外があります。 脊髄小脳変性症の方は、バランスを取ろうとして全身に過度な力が入り、筋肉がこわばりやすくなります。

もし、病気そのものの治療ではなく、以下のような「慢性的な痛みの病気」を併発しており、それが生活の質を下げている場合です。

  • ・頚腕症候群(首や肩のひどい凝り・痛み)
  • ・腰痛症(姿勢保持による腰の痛み)
  • ・五十肩
  • ・神経痛

これらの「痛みの治療」に対しては、医師の同意があれば、療養費という形で「保険」が使える場合があります。

脊髄小脳変性症そのもの(ふらつき等)の治療は自費になりますが、「こわばってしまった首や腰を保険で緩め、動きやすい体を作る」というアプローチは可能です。 これなら、経済的な負担を少し減らしつつ、全身の調整を行うことができます。(※適応には条件がありますので、詳しくはご相談ください)

【結論】「進行性の病」だからこそ、あなただけの基準で選んでください

脊髄小脳変性症は、病院の基準(標準治療)だけでは、「これ以上悪くならないように見守る」ことが中心になりがちです。 しかし、患者様が求めているのは、「今日、少しでも歩きやすくあること」「家族と会話を楽しめること」ではないでしょうか。

自費診療である当院の鍼治療は、国の基準に縛られず、「あなたの今の症状」に合わせたオーダーメイドの治療を提案できます。

お薬治療(標準治療)
= 病気の進行を抑えるベース

鍼治療(自由診療)
= 今ある機能を最大限に引き出し、生活の質を高める

この「併用」こそが、現時点で考えられる最善の選択肢だと私たちは考えています。

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