Rhoキナーゼ阻害薬(ファスジル)を使った突発性難聴の治療で、聴力が大きく改善したという報告が、大阪大学と関連病院から発表されています。
1.ファスジルって、もともと何の薬?
ファスジルは、もともと「くも膜下出血のあとに起こる脳血管けいれん」を防ぐための薬で、脳の血管が急に縮んで血流が落ち、神経の軸索が傷つくのを防ぐ目的で使われてきました。Rhoキナーゼという酵素の働きを弱めることで血管の縮みすぎを防ぎ、血流を守り、神経の回復を助ける作用があります。
2.ファスジルの作用は?
Rhoキナーゼという酵素の働きを弱めることで血管の縮みすぎを防ぎ、血流を守り、神経の回復を助ける作用があります。この仕組みが「内耳の血流が急に悪くなることで起こるタイプの突発性難聴」にも応用できるのではないかと考えられました。なお、現在認可されているRhoキナーゼ阻害薬は、ファスジルと緑内障の点眼薬のみです。
3.ファスジルを使った突発性難聴の治療
突発性難聴の原因の一つには、内耳の細い血管が急に縮んだり、血流が落ちる「内耳の血管トラブル」があるとされており、研究者たちは「脳血管けいれんを改善するファスジルなら、内耳の血流も守れるのではないか」と考えました。この発想から、大阪大学でステロイド治療にファスジルを追加した臨床研究が行われ、症例数こそ約10例と少ないものの、約9割の患者で聴力の改善が見られました。
4.標準治療を外せないという“倫理的な壁”
この研究は“ファスジルだけ”で行われたわけではありません。「ステロイド+ファスジル」の併用治療という形で行なわれています。突発性難聴は発症後の時間が勝負で、患者さんが同意しづらく、倫理委員会も許可を出しにくい状況だったのかもしれません。