顔面神経麻痺の「本当の原因」をご存知ですか?|ウイルス、ストレス、そして免疫力のお話

はじめに:突然のことに、戸惑われているあなたへ
ある日突然、鏡を見て顔が動かないことに気づく。 これほど恐ろしく、不安なことはありません。
「なぜ、私が?」 「昨日まで元気だったのに、どうして?」
病院で「顔面神経麻痺」と診断されても、専門用語が多くてよく分からなかったり、原因について納得しきれなかったりする方も多いのではないでしょうか。
この記事では、医学的な資料に基づき、顔面神経麻痺が起こる仕組みと、その引き金となる「ストレスと免疫力」について、専門家として分かりやすく解説します。
1.顔面神経麻痺の正体は「ウイルスの再活性化」
顔面神経麻痺には、脳の中に原因がある「中枢性(脳梗塞など)」と、脳から出た後の神経に原因がある「末梢性」があります。 耳鼻咽喉科で扱われる麻痺の大部分は、後者の「末梢性」であり、その約8割が以下の2つの病気です。
① ベル麻痺(全体の60〜70%)
最も多いタイプです。以前は原因不明と言われていましたが、近年の研究で「単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)」が原因であることが明らかになっています。
② ハント症候群(全体の10〜15%)
「水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)」が原因です。耳の周りに水ぶっかけができたり、難聴やめまいを伴ったりするのが特徴です。
◆なぜ、神経が麻痺するのですか?
これらのウイルスは、幼少期に感染して以来、ずっとあなたの神経の奥(膝神経節)に隠れていました。 それが何らかの理由で暴れ出し(再活性化)、神経に炎症を起こします。
顔の神経は、「顔面神経管」という狭い骨のトンネルを通っています。 ウイルスによる炎症で神経が腫れ(むくみ)上がっても、周りが硬い骨で囲まれているため逃げ場がなく、神経自身がギュッと締め付けられてしまいます。 その結果、血流が悪くなり(虚血)、麻痺が起こるのです。
2.ウイルスを目覚めさせる「ストレス」の正体

では、なぜ今までおとなしかったウイルスが、急に暴れ出したのでしょうか? その最大の引き金(誘因)が、「ストレス」による「免疫力の低下」です。
医学的な研究により、過労や心理的な葛藤が続くと、私たちの体を守る免疫システムが弱まることが分かっています。
・ウイルスと戦う物質(インターフェロン)が作られなくなる
・ウイルスを攻撃する細胞(NK細胞)の働きが弱まる
◆ストレスが免疫を下げる証拠
実際に、以下のような研究報告があります。
・配偶者との死別: 強い悲しみ(ストレス)を受けた人は、その後4〜8週間経ってもリンパ球の反応が低下していた。
・職業性ストレス: 仕事のストレスが高いと、血圧だけでなく免疫能も低下する。
・動物実験: ストレス(電気ショック)を与えられたラットは、免疫反応が抑制された。
つまり、あなたが感じている日々の疲れや心労が、知らず知らずのうちに免疫のガードを下げ、潜んでいたウイルス(ヘルペスなど)の再燃を許してしまった可能性が高いのです。
3.「私はストレスを感じていない」という落とし穴
「先生、私は毎日充実しています。ストレスなんてありません」 診察室でそうおっしゃる患者様も少なくありません。
しかし、ここに日本人特有の落とし穴があります。 私たちは学校教育や社会生活の中で、「協調性」や「我慢」を美徳とするように育てられてきました。
・周りに迷惑をかけてはいけない
・辛くても顔に出さずに頑張る
こうした国民性により、脳がストレスに対して鈍感になっている(あえて感じないようにスイッチを切っている)ケースが非常に多いのです。 先ほどのラットの実験でも、「自分で対処できる」と思っている場合は免疫抑制が少ないとされていますが、人間の場合、「我慢して対処しているつもり」でも、体(免疫系)は正直にダメージを受けています。
「ストレスはない」と思っている方ほど、実は体が限界を迎えていることに気づいていない。 これが、顔面神経麻痺の隠れた原因かもしれません。
4.治療の鍵は「免疫力の回復」にあります
病院の標準治療では、まずステロイドの点滴(パルス療法)などを行います。 これは、神経の「腫れ」を引かせて、神経が死んでしまうのを防ぐために絶対に優先すべき治療です。
しかし、ここには一つだけ注意点があります。 ステロイドは炎症を抑える強力な薬ですが、副作用として「一時的に免疫力を下げる」という性質を持っています。
麻痺の原因は「免疫力の低下」でした。 そこに、治療のためとはいえ免疫を下げるお薬を使うことになります。
当院のデータでは、約10%の方が再発を経験されていますが、その背景には、ステロイド治療によって「腫れは引いたけれど、免疫力は下がったまま(体温が低いまま)」という状態が残っていることが考えられます。
最後に:再発を防ぎ、笑顔を守るために

お薬の治療が終わったら、次は「免疫力を上げるケア」が必要です。 東洋医学(鍼治療)は、低下した免疫力や、ご自身では気づきにくいストレス(自律神経の乱れ)を整えることを得意としています。
「もう二度と、この顔になりたくない」 そう願うなら、お薬の力だけでなく、あなた自身の「治す力(免疫力)」を底上げしておくことが大切です。
もし、病院の治療が終わっても「体調が優れない」「冷えが気になる」と感じるようであれば、私たち専門家にご相談ください。 あなたの体が発しているSOSを、私たちがしっかりと受け止めます。
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顔面神経麻痺のご相談は、症状が複雑なため、すべて院長または専任の鍼灸師が直接対応しております。
午前中は他の患者様の集中治療に入っていることが多く、お電話になかなか出ることができないことがあります。
比較的、治療が落ち着き、ゆっくりお話を伺える「13時から17時に」相談されるのがおすすめです。
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【顔面神経麻痺は、鍼灸治療で良くなりますか?(詳細はこちら)】
【参考文献】
・ストレス診療ハンドブック第2版(メテ1カル・サイエンス・インターナショナル)
・顔面神経麻痺のリハビリテーション第2版(医歯薬出版)
・顔面神経麻痺診療の手引き-ベル麻痺とハント症候群(金原出版株式会社)
・顔面神経麻痺診断と治療-初期対応から後遺症まで(全日本病院出版会)
こちらもお読みください
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当院について
森上鍼灸整骨院
院長 吉池 弘明
森上鍼灸治療では、西洋医学の代替医療として鍼灸治療に取り組んでいます。 顔面神経麻痺や突発性難聴の患者様には、臨床経験20年以上の鍼灸師がチームを組んで治療にあたります。
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