多系統萎縮症とパーキンソン病が同じ種類の病気だと分かりました。先行しているパーキンソン病の治療研究が転用されると、治療薬の開発が一気に進むかもしれません。
神経毒を発生させると考えられているαシヌクレインを抑制する免疫療法や、αシヌクレインが原因の活性酸素の老化から神経を守る治療法、αシヌクレインが原因の病気で、先行して研究が進められていたパーキンソン病の薬からの転用が行われています。
ION464(別名BIIB101)
αシヌクレインを発生させる遺伝子情報を阻害する治験中のアンチセンス医薬品です。多系統萎縮症の患者24人の髄腔内へ、イオン464を投与する治験が欧州で行われています。現在、第Ⅰ相試験が実施されました。
※アンチセンス医薬品・・・タンパク質の合成を伝えるRNAと結合して機能を阻害・抑制するRNA。
NBMI
抗酸化作用のあるお薬で、αシヌクレインが固まるのを予防する作用が期待されています。現在、多系統萎縮症と進行性核上性麻痺の患者16人を対象に第Ⅱ相試験が行われています。
免疫治療(Lu AF82422)
αシヌクレインを中和、除去することによってMSAの進行を遅らせ、抑制できる可能性がある抗体治療薬です。米国と日本で第Ⅱ相試験が行われ、結果が2024年2月5日に発表されています。有用な効果は認められなかったとのことです。
リツマキシブ
リツマキシブはリウマチ疾患の治療に使われるお薬です。MSAは、活性酸素が原因の神経炎が起こることやシェーグレン症候群との合併頻度が高いことが知られているので、リツマキシブの抗炎症作用を期待して、MAS-Cの患者50人を対症にした第Ⅱ相試験が中国で進行中です。
間葉系幹細胞自家移植
間葉系幹細胞はグリア細胞(多系統萎縮症で変性する細胞)に分化できる細胞で、自分の骨髄や脂肪から取り出すことができます。静脈に投与しても脳まで届いて生着するかは不明です。メイヨクリニックでは髄注が、韓国では経動脈投与が試験中です。
※髄注・・・脳は血液脳関門があって薬剤が届かないので、薬剤を直接脳脊髄液に注入することで効果が期待できます。
コエンザイムQ10
多系統萎縮症になりやすい体質があることが想定されています。その中で、コエンザイムQ10を合成する遺伝子に異変があることが発見され、コエンザイムQ10を使った治験が行われました。効果は、プラセボ群に比べておおよそ30%の進行抑制があったとのことです。
※服用する量が通常の10倍前後となるので、副作用を防ぐため効率よく吸収できるかが今後の研究課題のようです。