めまい・ふらつきが続く突発性難聴でお悩みの方へ

めまい・ふらつきが続く突発性難聴でお悩みの方へ

めまい・ふらつきを伴う突発性難聴

めまい・ふらつきを伴う突発性難聴と、首の血流に着目した鍼治療という選択肢

更新 2026.08.18

突発性難聴のめまい・ふらつき

めまいと一緒に始まる突発性難聴は、重症になりやすい特徴があります。最初は目がぐるぐる回るような激しいめまいが起き、気持ち悪くなって吐いてしまうことや、救急車で運ばれることも少なくありません。

このタイプの突発性難聴は、高い音から低い音まで全体的に聞こえなくなっていることが多く、病院でもらう薬(ステロイドなど)だけでは治りにくい場合があります。

ぐるぐるする激しいめまいは、一般的に3日ほどで落ち着きます。もし1週間たってもめまいや強い不調が続く場合は、早めに専門的な鍼(はり)治療という選択肢を検討してみるのも一つの方法です。

  • この記事の執筆者

    森上鍼灸整骨院 院長 吉池 弘明

    森上鍼灸整骨院 院長 吉池 弘明

    【資格・経歴】
    ・厚生労働大臣認定:はり師/きゅう師/柔道整復師

    頭の中は、つねに愛する家族と鍼治療のことでいっぱい。耳鼻科疾患治療への探究心が強く、日々新たな治療法を模索する「はり・きゅうの日生まれ」62歳。

    お医者さんとは違った角度からの聴力検査と全身検査を取り入れ、のべ25万人を検査。全国から来院する患者さんへの治療成果を上げている。

  • 1. 突発性難聴とめまいの関係

    めまいを伴うと、なぜ治りにくいのか。

    めまいを伴う突発性難聴の予後が気になる様子のイラスト

    突発性難聴になったとき、「めまいが一緒に出るかどうか」は、耳の聞こえがどれくらい戻るかを大きく左右します。

    実は、めまいを伴う突発性難聴は、めまいがない場合に比べて「聴力が回復しにくい」というデータがあります。めまいがあるかどうかは、症状の重さを判断する大切なサインなのです。

    1-1. めまいの有無による回復率の差

    回復率の下がり方を、数字で見ます。

    • 回復率の低下: めまいを伴わない患者の聴力回復率は約55%であるのに対し、めまいを伴う患者の回復率は約29%に低下するという報告があります。
    • 高音域への影響: めまいがある場合、特に高周波音域(高音域)での回復が小さくなる(悪くなる)傾向があります。

    1-2. 「難聴の重症度」と「めまい」の独立した関係

    重症度とは別に働く、独立した要因。

    • 重症度との相関: 難聴が高度であるほどめまいの合併率は高くなります。5周波数平均聴力レベルが90dB以上の「Grade 4(最も重度)」では、約57%〜67%の症例にめまいが合併します。
    • 同じ重症度での比較: 「難聴が重いからめまいが起こり、その結果予後が悪い」というだけではありません。同じ難聴の程度(重症度)の症例同士を比較しても、めまいを伴う症例の方が、めまいを伴わない症例よりも聴力予後が明らかに悪いことが実証されています。
    • 独立した予後因子: 2001年の全国疫学調査データを用いた多変量解析において、「初診時の聴力レベル」「発症から来院までの日数」「年齢」に並んで、「めまいの有無」は独立して聴力予後(固定時聴力レベル)に関与していることが明らかになっています。

    1-3. めまいの性質(回転性・非回転性)と予後

    めまいの種類は、予後を分けません。

    • めまいの性状が「回転性(グルグル回る)」か「非回転性(フワフワ、フラフラなど)」かという違い自体は、聴力予後(転帰)には直接関係しないという結果が得られています。めまいの種類に関わらず、めまいという前庭症状を伴うこと自体が予後不良の指標となります。

    1-4. なぜめまいを伴うと予後が悪いのか(病態的背景)

    内耳の傷が広いことを示すサインです。

    • 障害範囲の広さ: めまいを伴う症例は、障害が聴覚を司る「蝸牛」だけでなく、隣接する平衡感覚の「前庭(球形嚢)」や「半規管」にまで広く波及している(内耳全体の障害である)ことを示唆しています。
    • 内耳出血などの合併: 3テスラMRI(3D-FLAIR画像)を用いた検査において、めまいを伴う重症例では内耳液に高信号(微細な内耳出血や、血管の透過性亢進によるタンパク漏出)が認められる割合が高く、この画像所見がある症例もまた、独立した聴力予後不良因子となっています。
  • 2. めまいが治らないことはある?

    薬で改善しないとき、何を試すべきか。

    突発性難聴のめまいは自然に消えることも多いですが、1か月以上よくならない場合は適切な対処が必要です。

    薬だけで改善が見られないときは、リハビリとなる運動療法を試すのが効果的です。特に、2本のポール(ストック)を持って歩く「ポールウォーク」は、安全に身体のバランス感覚を整える方法としておすすめです。

    お薬とは違ったアプローチでおすすめの「ポールウォーキング」をしているイラスト
  • 3. めまいは、いつまで続く?

    時期ごとに、続く期間の目安があります。

    突発性難聴に伴うめまいの持続期間は、「急性期の激しいめまい」「回復期のふらつき」「長期化・再燃するケース」の3つの段階に分けて考えることができます。

    突発性難聴のめまいがいつまで続くのかを説明した画像

    3-1. 急性期の激しいめまい(数日〜1週間程度)

    激しい回転性は、数日で落ち着きます。

    発症直後の最もつらい時期です。

    • 2〜3日程度:静かに横になって安静を保つことで、激しい回転性めまいや激しい吐き気、眼振(眼球の不随意な揺れ)は通常2〜3日で落ち着いてきます。ただし、内耳動脈の塞栓(詰まり)などが原因で強い酸欠状態が起きている場合は、激しい症状が約1週間続くこともあります。
    • 3〜4日後: 多くの場合は発症から3〜4日後には、ふらつきはありつつも吐き気を伴わずに歩行できるようになります。
    • 1週間後:明るい場所で目を開けている限りは、1週間ほどで日常生活を問題なく送れる程度に回復します。

    3-2. 回復期のふらつき・浮動感(1〜2ヶ月程度)

    浮動感は、ふつう数ヶ月で治まります。

    急性期の激しい回転性めまいが治まった後、体を動かしたり頭の位置を変えたりした時に生じる、フワフワするようなふらつきや誘発性のめまいの時期です。

    • これらは、ダメージを受けた内耳の左右バランスの崩れを脳が補う「前庭代償(ぜんていだいしょう)」という働きによって、通常は1〜2ヶ月で自然に消退(軽快)していきます

    3-3. 長期化・再燃するケース(数ヶ月〜1年以上)

    年単位で長引く場合の、原因と背景。

    突発性難聴のめまいは、原則として1回限りで繰り返さないのが特徴です。しかし、以下のような要因で症状が長期化・再燃することがあります。

    • 高齢者の場合:脳のバランス代償機能(前庭代償)に時間がかかるため、めまいや歩行時のふらつきが1年以上、場合によっては3〜4年にわたって持続・遷延することがあります。
    • 前庭障害が残存した場合:バランスを司る前庭の障害が強く、半規管麻痺(CP)が固定して残ってしまった場合、長期的なふらつきの原因になります。
    • 二次的な病態の合併(再燃):一度めまいが軽快した後に、剥がれ落ちた耳石が半規管に迷入する「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」や「内リンパ水腫」を二次的に合併(続発)し、再び執拗なめまい発作を繰り返すようになるケースがあります。調査では、めまいを伴う突発性難聴の罹患後、50.0%がBPPV、40.0%が内リンパ水腫を続発したと報告されています。
  • 4. ふらつきが治らないことはある?

    長引くふらつきには、理由があります。

    突発性難聴でふらつきが治らない様子のイラスト

    突発性難聴によるふらつきは、多くの場合、時間がたつにつれて少しずつ自然と良くなります。

    しかし中には、数か月〜年単位で体がふわふわするような感覚が長引いてしまう方もいます。病院の薬だけでは変化を感じにくい場合、主な原因として以下の3つが考えられます。

    4-1. 前庭代償の遅れ・不全(特に高齢者に多い)

    脳の調整が追いつかないと残ります。

    ダメージを受けた内耳の左右バランスの崩れを、脳(中枢)が学習してバランスを補正する仕組みを「前庭代償(ぜんていだいしょう)」と呼びます。

    • 高齢による影響:高齢者の場合、この脳による代償機能が十分に働かなかったり不完全になりやすいため、ふらつきが残りやすい傾向があります。そのため、特に高齢の突発性難聴患者において、発症後1年以上にわたってふらつきやめまいを訴え続ける症例が報告されています。

    4-2. 内耳の前庭機能障害(半規管麻痺)の固定

    内耳のセンサーの働きが戻らない状態。

    • 前庭機能の低下:突発性難聴のめまいやふらつきが強い症例では、内耳の平衡感覚を司る機能(半規管や耳石器)のダメージが深く残ります。ある調査では、めまいを伴う突発性難聴を患った後、長期経過後も66.7%に半規管麻痺(CP:カロリックテストによる反応低下)の残存が確認されており、この機能低下が回復せずに固定してしまうことが長期的なふらつきの原因となります。

    4-3. 二次的な病態の合併(続発症)

    落ち着いた後にぶり返す、別の病気。

    最初の激しいめまいやふらつきがいったん落ち着いた後、再び執拗なふらつきやめまいがぶり返すことがあります。めまいを伴う突発性難聴罹患者を対象とした調査では、その後の「遷延するめまい(治らないふらつき)」の具体的な原因として、以下の二次的な合併症が高い割合で確認されています。

    • 続発性BPPV(良性発作性頭位めまい症) [約50%]:内耳へのダメージにより、耳石器から剥がれ落ちた耳石が半規管に迷入することで起こります。これにより、頭を動かしたり寝返りをうったりするたびに、ふらつきやめまいが誘発されるようになります。
    • 続発性内リンパ水腫 [約40%]:内耳の血流障害やウイルスの影響によってリンパ液の調整機能が壊れ、内耳に「水ぶくれ(水腫)」が発生する病態です。
    • 前庭代償不全 [約10%]:脳によるバランスの補正機能(前庭代償)がうまく完成しない状態です。
  • 5. 突発性難聴のめまいはなぜ起こる?

    耳の奥で起きていることを解説します。

    突発性難聴で、めまいが起きる仕組みと鍼治療のアプローチを教えているイラスト

    耳の奥には「音を聞く部分(蝸牛)」と「体のバランスを保つ部分(前庭・半規管)」が隣り合って存在しています。バランスを保つ部分にまでダメージが広がるとめまいが起こります。

    当院に来院される方の約4割もめまいを伴っていますが、その多くは首周りから耳へ通る血管の血流低下が関係しています。そのため当院では、首周りの血流や自律神経を整えるアプローチを行っています。

    5-1. 内耳の広範囲な障害

    聞こえとバランス、両方が傷つく。

    突発性難聴は、何らかの原因で内耳の有毛細胞が障害される疾患ですが、めまいを伴う場合は、蝸牛系(聞こえ)と前庭系(バランス)の両方が同時に障害を受けていると考えられます。

    • 障害の波及:難聴が全周波数に及ぶような重症例では、蝸牛に近い「球形嚢(耳石器の一部)」の障害がほぼ必発であり、さらに隣接する半規管などへ順次炎症や障害が波及していくことで、激しいめまいが引き起こされると想定されています。

    5-2. 内耳の循環障害(血管性病変)

    耳を養う血管が詰まると起こります。

    内耳に血流を送る「迷路動脈」や、その元となる「前下小脳動脈(AICA)」に、血栓や塞栓、血管攣縮などの血流障害が起こることが原因の一つと考えられています。

    ※「迷路動脈」・「前下小脳動脈(AICA)」は、椎骨動脈から枝分かれする主要な血管です。

    • エネルギー不全(内耳梗塞):内耳を栄養する動脈が詰まると、蝸牛・耳石器・三半規管への血液供給が途絶え、内耳全体が「酸欠(エネルギー不全)」の状態になります。これにより、難聴と同時に強い回転性めまいが生じます。

    5-3. 内耳出血

    画像検査で見えてきた新しい所見です。

    近年、高解像度MRI(3D-FLAIR法)による検査で、突発性難聴の患者の患側内耳に高信号が認められるケースがあることが分かりました。

    • 微細な出血: この信号は、内耳液内での微量な出血や、血管透過性の亢進による蛋白濃度の症状を示唆しています。このような「内耳出血」が起こると、リンパ液の組成が乱れ、感覚細胞が強く障害されるため、めまいを伴いやすく、聴力予後も不良となる傾向があります。

    5-4. めまいの特徴と注意点

    繰り返さないのが、このめまいの特徴。

    • 単発性:突発性難聴に伴うめまいは、原則として1回限りの発症であり、メニエール病のように発作を繰り返すことはありません。
    • 性質の違い:難聴の前や同時に起こるめまいは「回転性(グルグル回る)」が多く、難聴の後に起こるめまいは「動揺感や浮動性(フワフワする)」が多いとされています。
    • 予後との関係:めまいを伴う例は、伴わない例に比べて内耳の障害範囲が広いと推測されるため、一般に聴力の回復が悪い(予後不良)とされる重要な指標となります。
  • おわりに

    めまいから始まる突発性難聴は、高い音を中心に広い範囲の音が聞こえにくくなる特徴があります。

    病院で処方されるめまい止めは、主につらい症状を一時的に和らげるためのものです。めまいの根本にある「耳の奥の血流不足」が解消されないと、ふらつきや不調が続いてしまうことがあります。

    当院では、首周りの血流を整える鍼治療を通じて、長引くめまいや難聴に向き合ってきた実績があります。「病院の薬だけではなかなか改善しない」「少しでも良い状態を目指したい」とお悩みの方は、選択肢の一つとして一度当院にご相談ください。