
耳の奥には「音を聞く部分(蝸牛)」と「体のバランスを保つ部分(前庭・半規管)」が隣り合って存在しています。バランスを保つ部分にまでダメージが広がるとめまいが起こります。
当院に来院される方の約4割もめまいを伴っていますが、その多くは首周りから耳へ通る血管の血流低下が関係しています。そのため当院では、首周りの血流や自律神経を整えるアプローチを行っています。
5-1. 内耳の広範囲な障害
聞こえとバランス、両方が傷つく。
突発性難聴は、何らかの原因で内耳の有毛細胞が障害される疾患ですが、めまいを伴う場合は、蝸牛系(聞こえ)と前庭系(バランス)の両方が同時に障害を受けていると考えられます。
- 障害の波及:難聴が全周波数に及ぶような重症例では、蝸牛に近い「球形嚢(耳石器の一部)」の障害がほぼ必発であり、さらに隣接する半規管などへ順次炎症や障害が波及していくことで、激しいめまいが引き起こされると想定されています。
5-2. 内耳の循環障害(血管性病変)
耳を養う血管が詰まると起こります。
内耳に血流を送る「迷路動脈」や、その元となる「前下小脳動脈(AICA)」に、血栓や塞栓、血管攣縮などの血流障害が起こることが原因の一つと考えられています。
※「迷路動脈」・「前下小脳動脈(AICA)」は、椎骨動脈から枝分かれする主要な血管です。
- エネルギー不全(内耳梗塞):内耳を栄養する動脈が詰まると、蝸牛・耳石器・三半規管への血液供給が途絶え、内耳全体が「酸欠(エネルギー不全)」の状態になります。これにより、難聴と同時に強い回転性めまいが生じます。
5-3. 内耳出血
画像検査で見えてきた新しい所見です。
近年、高解像度MRI(3D-FLAIR法)による検査で、突発性難聴の患者の患側内耳に高信号が認められるケースがあることが分かりました。
- 微細な出血: この信号は、内耳液内での微量な出血や、血管透過性の亢進による蛋白濃度の症状を示唆しています。このような「内耳出血」が起こると、リンパ液の組成が乱れ、感覚細胞が強く障害されるため、めまいを伴いやすく、聴力予後も不良となる傾向があります。
5-4. めまいの特徴と注意点
繰り返さないのが、このめまいの特徴。
- 単発性:突発性難聴に伴うめまいは、原則として1回限りの発症であり、メニエール病のように発作を繰り返すことはありません。
- 性質の違い:難聴の前や同時に起こるめまいは「回転性(グルグル回る)」が多く、難聴の後に起こるめまいは「動揺感や浮動性(フワフワする)」が多いとされています。
- 予後との関係:めまいを伴う例は、伴わない例に比べて内耳の障害範囲が広いと推測されるため、一般に聴力の回復が悪い(予後不良)とされる重要な指標となります。