改善しない突発性難聴でお悩みの方へ

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ステロイドが効かない突発性難聴

病院でステロイド治療を受けても効果が出ない突発性難聴と、鍼治療という選択肢

更新 2026.08.27

突発性難聴でステロイドが効かない場合

重症の突発性難聴では、病院でステロイド治療を受けても思うように効果が現れないことがあります。

これは耳の奥(内耳)に不要な物質の侵入を防ぐバリア機能(血液内耳関門)があり、飲み薬や点滴のステロイドが届きにくいことも理由の一つです。

ステロイドの投与期間が終わっても聴力の回復が見られない場合は、お薬とは別の角度からのアプローチ(鍼治療など)を並行して検討してみるのも一つの手です。

  • この記事の執筆者

    森上鍼灸整骨院 副院長 吉池 美奈子

    森上鍼灸整骨院 副院長 吉池 美奈子

    【資格・経歴】
    ・厚生労働大臣認定:はり師/きゅう師/柔道整復師

    宮崎県の名門鍼灸一家に生まれる。幼いころ、鍼で風邪を治してもらうために病院へ連れていかれる友人をうらやましく思って育つ。

    患者さんへの寄り添いを1番に大切にし、スタッフ育成と耳鼻科疾患の治療に奔走する二児の母。

  • 1. 突発性難聴のステロイドの効果はいつから?

    回復のサインはいつ頃から出るのか。

    ステロイドの効果が現れる時期をイラスト化

    ステロイド治療を開始すると、投薬中または薬の量を段階的に減らしていく過程(漸減期)で回復の兆しが現れるのが一般的です。

    ステロイドは体に負担をかけないよう急に中断せず、徐々に量を減らして終了します。

    この減量期間に入っても変化が見られない場合は、別の対処法を検討する目安となります。

    1-1. ステロイドの効果の出方

    回復の早さは、重症度で変わります。

    具体的な効果発現の時期や聴力の回復過程は、難聴の重症度などによって以下のパターンに分かれます。

    • 急速に改善するケース(2〜3日): 聴力障害が比較的軽い(60dB前後まで)症例に多く、治療開始後2〜3日、長くとも5〜6日の間に急速に改善し、ほぼ治癒に至ります。
    • なだらかに改善するケース(10〜20日程度): 90dB程度までの重症例に多く、回復のペースは多少なだらかですが、10日〜20日程度で治癒へと向かいます。
    • 緩やかに改善、または途中で頭打ちになるケース: 最初から回復の動きが緩やかで、正常な聴力までは届かずに途中で頭打ちになります。主にステロイドによる初期治療が十分に効かなかった高度難聴例にみられます。
    • 立木 孝(著)『EBMからみた突発性難聴の臨床』2005年.金原出版

    1-2. 効果の有無や予後を判断するタイミングの目安

    効いているかを、いつ見極めるのか。

    • 治療開始後4〜5日目: ステロイド治療を開始して4〜5日の経過をみても改善の兆候が全く現れない場合は、ステロイドの効果が不十分である可能性が考えられます。この場合、7〜10日後から高圧酸素療法など第2の選択肢(救済治療)への切り替えが検討されます。
    • 7日〜14日以内: 治療開始後7日以内、遅くとも14日以内に何らかの回復傾向(聴力の改善)がみられるかどうかが、最終的に聴力がどこまで回復するかを予測する極めて重要な目安となります。

    このように、ステロイドの効果は治療開始から数日〜1週間以内に現れることが多く、この期間内の聴力の反応がその後の治療方針を決定する上で非常に重要です。

    • 立木 孝(著)『EBMからみた突発性難聴の臨床』2005年.金原出版
  • 2. 突発性難聴におけるステロイド治療の注意点・副作用

    強い薬だからこそ、副作用も知っておく。

    ステロイドの副作用例をイラスト化

    ステロイドは強力な炎症抑制作用を持つ反面、血糖値や血圧の上昇、不眠、精神的な不調(落ち込みや不快感)などの副作用を引き起こすことがあります。

    身体への負担を考慮して長期間の連続投与は行われず、基本的には1回(1コース)の集中治療で終了となります。

    2-1. ステロイドの鬱

    気分の落ち込みが、薬のせいのことも。

    ステロイド誘発性精神障害(ステロイド精神病)は、突発性難聴等の治療で用いられる高用量ステロイド投与に伴う深刻な精神神経副反応です。

    病態機序として、合成グルココルチコイドの大量流入による視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の自己フィードバック抑制不全や、感情や記憶を司る大脳辺縁系(海馬や扁桃体)のグルココルチコイド受容体への過剰刺激、脳内モノアミン代謝の修飾などが関与します。

    臨床症状は、初期の不眠や焦燥感、軽躁状態、うつ状態から、重症例では幻覚、妄想、意識混濁を伴うせん妄(精神病状態)にまで至ります。

    特に突発性難聴患者においては、片耳の失聴という急性ストレスによる不安や、左右の聞こえの違いによる脳への過度な負担が重なることで、精神症状が著しく難治化・悪化しやすい悪循環に陥るため、慎重な経過観察と早期の介入が不可欠です。

    • 河野 友信・吾郷 晋浩・石川 俊男・永田 頌史(編)『ストレス診療ハンドブック 第2版』2003年(HPA軸・大脳辺縁系とグルココルチコイドの関係、ステロイドの精神症状副作用について).メディカル・サイエンス・インターナショナル
    • 森上鍼灸整骨院「突発性難聴は鍼治療でよくなりますか?」『ステロイドが効かない(ポッドキャストデータ)』(ステロイド精神病とうつ・不眠、左右の聴こえの違いが脳に与える負担について).
    • 一般社団法人 日本聴覚医学会(編)『急性感音難聴診療の手引き 2018年版』2018年(全身投与における精神症状等の副作用および注意点について).金原出版
    • 小川 郁(編)『今日の耳鼻咽喉科・頭頸部外科治療指針[改訂第4版]』2019年(大量療法の major side effects としての精神症状・うつについて).医学書院

    2-2. ステロイドの高血糖

    血糖値が急に上がることがあります。

    突発性難聴の治療に用いられるステロイドパルス療法(大量全身投与)において、最も警戒すべき全身副作用の一つが「ステロイド高血糖」です。

    これは、大量に流入した糖質コルチコイドが肝臓での糖新生を強力に促進し、同時に末梢組織における糖利用(インスリン感受性)を著しく抑制(インスリン抵抗性の増大)することで発生します。

    特に糖尿病合併例では、急激な血糖上昇に伴う糖尿病性ケトアシドーシス高浸透圧高血糖状態(非ケトン性昏睡)を防ぐため、スライディングスケール法や強化インスリン療法による厳格な血糖管理を行うことが不可欠です。

    近年では、こうした高血糖リスクを回避するため、全身への影響を抑えて局所にのみ高濃度で浸透させるステロイド鼓室内注入療法が初期治療の有力な選択肢として推奨されています。

    • 大野 慶子・木村 百合香「高齢者および糖尿病合併突発性難聴への対応」『突発性難聴update』2015年(血糖上昇、ケトアシドーシスや昏睡の防止、スライディングスケール、強化インスリン管理、鼓室内注入の有用性について).全日本病院出版会
    • 小川 郁(編)『今日の耳鼻咽喉科・頭頸部外科治療指針[改訂第4版]』2019年(耐糖能低下・糖尿病の合併症対策と注意点について).医学書院
    • 石川 俊男「ストレスの生理」『ストレス診療ハンドブック 第2版』2003年(グルココルチコイドの代謝作用および糖新生の促進機序について).メディカル・サイエンス・インターナショナル

    2-3. ステロイドの高血圧

    血圧が上がりやすくなる仕組みとは。

    突発性難聴の治療で施行されるステロイドパルス療法(大量全身投与)において、高血糖と並んで警戒すべき全身副作用が「ステロイド高血圧」です。

    これは、大量に投与された糖質コルチコイド(グルココルチコイド)が、本来の作用に加えてミネラルコルチコイド(鉱質コルチコイド)受容体にも交差作用することで引き起こされます。

    この作用により、腎臓の遠位尿細管や集合管においてナトリウムと水の再吸収が強力に促進され、体内に水分が貯留して循環血液量(体液量)が著しく増加します。

    さらに、ステロイドには血管収縮薬(カテコールアミンなど)に対する血管の反応性を維持・亢進させる作用もあるため、末梢血管抵抗の増大を招き、血圧を急激に上昇させます。

    特に高齢者や高血圧などの生活習慣病の既往がある患者では、脳血管障害のリスクを高めるため、血圧の厳重な監視と慎重な管理が不可欠です。

    • 大野 慶子・木村 百合香「高齢者および糖尿病合併突発性難聴への対応」『突発性難聴update』2015年(大量投与時の血圧上昇リスク、高血圧合併例への慎重投与と厳重監視について).全日本病院出版会
    • 中島 務・寺西 正明「突発性難聴の治療と効果判定」『Monthly Book ENTONI』No.54、2005年(ミネラルコルチコイド作用、水分貯留、血管収縮薬に対する反応性維持について).全日本病院出版会
    • 廣 正基「高血圧」『鍼灸療法ガイド2』2009年(アルドステロンによる尿細管でのナトリウム再吸収促進、体液量増加による血圧上昇機序について).協同医書出版社
    • 伊藤 健「急性感音難聴 突発性難聴」『JOHNS(難聴を治す 2020年版)』Vol.36 No.1、2020年(ステロイドパルス療法による高血圧の増悪や消化管出血等の副作用リスクについて).東京医学社
  • 3. 突発性難聴のステロイド鼓室内投与

    耳に直接届ける方法にも、弱点があります。

    鼓室内投与は効果がある反面、リスクがあることを示唆するイラスト

    ステロイド鼓室内投与とは、鼓膜を通じて耳の奥へ直接ステロイドを注入し、薬効を届きやすくする治療法です。

    直接薬剤を届ける期待がある一方、一時的に鼓膜に穴が開いたままになったり、感染リスク(中耳炎など)に注意が必要な側面もあります。

    医療機関によって実施方針や回数(数回程度など)は異なります。

    3-1. 鼓膜に穴があく

    注射の穴が、そのまま残ることも。

    ステロイド鼓室内投与(局所投与)では、鼓膜穿孔(鼓膜の穴)が残存するリスクがあります。穿孔が残存する頻度は約1〜10%(あるいは約1割)と報告されています。

    特に複数回の注入や換気チューブ留置を行うと穿孔リスクは高まりますが、回数を減らした2回注入プロトコールでは残存率5.2%であったという報告もあります。

    また、過去の中耳炎の影響で鼓膜が菲薄化(薄く変化)している症例などは、穿刺によって穿孔が生じやすいため、十分慎重に行う必要があります。

    万が一穿孔が自然閉鎖しない場合は、穴を塞ぐための手術(鼓膜閉鎖術や形成術)が必要になることもあるため、治療開始前にメリットと不利益を十分に説明し、インフォームド・コンセント(同意)を得ることが極めて重要です。

    • 一般社団法人 日本聴覚医学会(編)『急性感音難聴診療の手引き 2018年版』2018年.金原出版
    • 帝京大学医学部耳鼻咽喉科学教室「急性感音難聴」『難聴を治す 2020年度版』JOHNS Vol.36 No.1、2020年.東京医学社
    • 坂田 英明(編)『鼓室内注入療法の臨床―突発性難聴の治療を中心に―』2023年.国際医学出版

    3-2. 中耳炎になりやすい

    治療のあとに、中耳炎が起きやすい。

    突発性難聴に対するステロイド鼓室内注入療法は、全身的な副作用を抑えられる一方、局所的な合併症として「治療後急性中耳炎(post-treatment otitis media)」を併発しやすいリスクがあります。

    文献によると、本療法における中耳炎の合併頻度は約7%に達すると報告されています。

    中耳炎を惹起しやすい主な要因は、手技による物理的要因と、薬剤の薬理作用です。鼓膜穿刺(あるいは換気チューブ挿入)の際、鼓膜にできた小孔から外耳道の常在菌や細菌が中耳腔内へ「経外耳道的」に侵入しやすい状態となります。

    そこに注入されたステロイド薬が持つ強力な「免疫抑制作用」により、中耳粘膜の局所的な感染防御能(抵抗力)が一時的に低下するため、中耳腔内に細菌が繁殖し、耐性菌などによる二次的な「感染性中耳炎」を引き起こしやすい環境が形成されるためです。

    • Joshua Lee, et al. “Current applications of intratympanic corticosteroid therapy for inner ear disorders”『鼓室内注入療法の臨床―突発性難聴の治療を中心に―』2023年(治療後急性中耳炎の合併頻度約7%、注射・チューブ留置による鼓膜穿孔リスクについて).国際医学出版
    • 松原 篤「好酸球性中耳炎」『今日の耳鼻咽喉科・頭頸部外科治療指針[改訂第4版]』2019年(ステロイド局所使用に伴う、耐性菌による二次的な感染性中耳炎の併発について).医学書院
    • 飯野 ゆき子「好酸球性中耳炎に対する処置2」『JOHNS』Vol.36 No.1、2020年(ステロイド投与による局所免疫抑制と二次感染、耳漏管理について).東京医学社
  • 4. ステロイドが使えない場合・効果が出ない場合の選択肢(鍼治療)

    薬が難しい時、鍼という選択肢があります。

    ステロイド治療ができない場合の鍼治療が有効的なことを示すイラスト

    持病(高血圧・糖尿病など)や妊娠中、抗不安薬の服用等でステロイドの集中治療(パルス療法)が受けられない方にとっても、鍼治療は有効な選択肢となります。

    特に自律神経の乱れやストレスが関係しているケースでは、首周りの血流を促すことで耳の環境を整える効果が期待できます。

    なお、突発性難聴のケアには耳の解剖学や血流に関する専門知識が必要です。ご相談される際は、突発性難聴の施術実績が豊富で、親身に対応してくれる鍼灸院を選ぶことをおすすめします。

    4-1. 突発性難聴の鍼治療

    首の血流に着目したアプローチです。

    突発性難聴に対する鍼治療は、病院のステロイド治療等で効果が不十分だった中度〜高度の症例(全域スケールアウト含む)に対しても高い改善効果が期待できます。

    主なメカニズムは、首の深い筋肉を緩めることで、耳や脳を栄養する唯一の血管である「椎骨動脈」の血流を改善することです。

    これにより、極度の酸欠で一時的に機能休止(冬眠状態)していた聴細胞(有毛細胞など)への酸素と栄養の供給が再開され、耳の再生力が高まります。また、鍼刺激はノンレム睡眠時の成長ホルモン分泌や自然治癒力を強力に活性化させます。

    さらに、自律神経を整えて耳鳴り、耳閉感、めまいなどのつらい随伴症状を和らげるだけでなく、ステロイドパルス療法の副作用である免疫力低下や体表温度低下(冷え)、精神的なうつ・不眠・不安も同時に解消し、心身の回復を総合的に後押しします。

    標準治療と鍼治療の併用における優位性を示すメタアナリシスも報告されています。

    • 吉池 弘明(監修)「突発性難聴は鍼治療でよくなりますか?」『森上鍼灸整骨院 のべ14万人の治療データ(ポッドキャストデータ)』(改善率87%、成長ホルモン活性化、ステロイド副作用である冷えや不眠・不安への効果について).
    • 森上鍼灸整骨院(編)『ステロイドが効かない』(姿勢筋の緩和による椎骨動脈の血流改善、サーモグラフィ等を用いた自律神経・ストレス状態の可視化、成長ホルモンによる聴細胞修復について).
    • 一般社団法人 日本聴覚医学会(編)『急性感音難聴診療の手引き 2018年版』(標準治療と鍼治療併用の有効性に関するメタアナリシス〈Zhang XC 2015〉の評価について).金原出版
    • 佐々木 和郎「耳鼻科・眼科系の主要症状-4 難聴」『鍼灸療法ガイド2-1』2009年(頸部筋緊張と椎骨動脈血流、内耳血流への間接的影響について).協同医書出版社

    4-2. 突発性難聴の鍼治療の問題

    鍼を選ぶ前に知りたい弱点。

    突発性難聴に対する鍼治療には、患者さんが治療を選択・継続する上でいくつかの大きな問題点が存在します。

    第一に、公的医療保険が適用されない点です。鍼灸の保険適用は神経痛など特定の6疾患に限定されており、難聴は全額自己負担となります。

    第二に、検査機器の不備です。回復度を客観的に評価するための聴力測定器を備えていない鍼灸院が多く、手探りでの治療になりがちです。

    第三に、専門家を見極めにくい点です。鍼治療は施術者によりツボへの刺入角度や深さ、刺激量(ドーゼ)が多種多様で再現性に乏しく、技術格差が激しい実状があります。

    そのため、チェーン展開している院や経験の浅い院を避け、耳鼻科的検査と全身管理を徹底できる専門院を患者さん自身が探す必要があります。

    • 吉池 弘明(監修)「突発性難聴は鍼治療でよくなりますか?」『森上鍼灸整骨院 のべ14万人の治療データ(ポッドキャストデータ)』(刺激量・ドーゼの再現性のなさ、聴力測定器の不備、鍼灸院選びの重要性について).
    • 日本鍼灸研究会『臨床鍼灸治療』(鍼灸保険適用の限界と、医療との併療制限について).医道の日本社
    • 安藤 文紀『鍼灸臨床メカニズムとエビデンス最新科学』(保険医療機関内での鍼灸が混合診療として禁止されている実状について).
  • おわりに

    病院でのステロイド治療で十分な結果が出なかったからといって、回復の可能性がすべて閉ざされたわけではありません。

    当院では40年にわたり、ステロイド治療で思うような変化が見られなかった患者さんと向き合ってまいりました。専門的な検査と丁寧なアプローチで耳の血流改善をサポートいたしますので、どうぞ一人で抱え込まずにご相談ください。