病型や遺伝子のリピート数の違い、表現促進現象により進行速度が変わります。
3-1.病気の種類(病型)そのものの違い
脊髄小脳変性症は一つの病気ではなく、複数の異なる病気の総称です。そのため、どの病型に罹患しているかによって障害される神経の範囲や進行スピードが根本的に異なります。
たとえば、遺伝しない(孤発性)「多系統萎縮症(MSA)」は進行が比較的速く、発症から約3年で介助歩行、約5年で車椅子が必要になり、予後が悪いとされています。
一方で、Kさんのお父さんが該当する可能性が高い遺伝性の「脊髄小脳失調症6型(SCA6)」や「31型(SCA31)」などは、純粋に小脳だけがゆっくりと障害されるタイプであり、発症は中年以降と遅く、進行も非常に緩やかであるという特徴があります。
3-2.遺伝子の「異常な繰り返しの長さ(リピート数)」の違い
遺伝性SCDの多く(SCA1、SCA2、SCA3、SCA6など)は、原因となる遺伝子の中にある「CAG」という特定の塩基配列の繰り返し(リピート)が、正常な人よりも異常に長くなってしまうことで発症します。
このリピート数は患者さんごとに異なりますが、「リピートの回数が多ければ多いほど、発症年齢が若くなり、症状も重症化する(進行が早くなる)」という強い相関関係(法則)があります。
また、Kさんのお父さんの候補であるSCA31(TGGAAという配列の挿入)においても、その異常配列が長い患者さんほど若い年齢で発病する傾向が確認されています。
3-3.世代を経るごとの若年化・重症化(表現促進現象)
遺伝性の異常なリピート配列は、親から子へ世代を受け継ぐ際に不安定になり、さらに長さが伸びてしまう性質があります。
そのため、親の世代よりも子の世代の方が発症年齢が若くなり、症状もより重くなることがあり、これを「表現促進現象」と呼びます。
特に、病気の原因遺伝子が父親から伝わる場合(父系遺伝)に、リピート数が大きく伸びやすく、この現象が顕著に現れることが知られています。
(※ただし、SCA6の場合はこのリピート数が安定しており、世代間での若年化はほとんど起こらないとされています
。)
原因が分かっても進行速度や将来の症状は病型によって大きく異なります。
遺伝子検査の結果や現在の症状から、今後の経過をある程度予測できる場合があります。
当院では検査結果の見方や生活上の注意点についても無料でご相談をお受けしています。