経過観察の他に治療法を探している方へ

経過観察の他に治療法を探している方へ

脊髄小脳変性症の治療法

脊髄小脳変性症の鍼治療に取り組む鍼灸師 吉池 加奈

更新 2026.07.12

脊髄小脳変性症の治療法について教えてください。

脊髄小脳変性症の治療法について教えてください。東京都 K.A.さん

父親からの脊髄小脳変性症のようです。
経過観察以外に、何か治療法はないのですか?

大学病院での診察は6ヶ月に1回だけ。普段のセレジストというお薬は、近くの町のお医者さんに通ってもらっています。

先生のところに通院されている患者さんはどんな取り組みや治療をされていますか?

東京都 K.A.さん

常染色体顕性遺伝(旧:優性遺伝)の脊髄小脳変性症(脊髄小脳失調症SCA)は、セレジストなどのお薬のほか、リハビリや鍼灸治療を組み合わせることで、症状の進行に抗い、生活の質(QOL)を長く保つ効果を上げている患者さんが多いです。

脊髄小脳失調症は遺伝子の型番により、大きく分けて「ポリグルタミンが原因のタイプ(1型、2型、3型、6型、7型、17型など)」と、「RNAの異常や通常の遺伝子変異が原因のタイプ(31型、36型、8型、10型、12型など)」があります。

どの型であっても、病院で受ける保険を使った標準的な治療の基本は共通しています。それぞれの脊髄小脳失調症について、現在、日本でおこなわれている治療法やケアを説明します。

柔道整復師・鍼灸師 吉池 加奈

  • この記事の執筆者

    森上鍼灸整骨院 柔道整復師・鍼灸師 吉池 加奈

    森上鍼灸整骨院 柔道整復師・鍼灸師 吉池 加奈

    【資格・経歴】
    ・厚生労働大臣認定:はり師/きゅう師/柔道整復師

    脊髄小脳変性症の治療歴10年

    リハビリと鍼治療を組み合わせ、患者さんの生活の質(QOL)を長く保てるよう、治療と心のケアに取り組む。持ち前の明るさで場を和ませるムードメーカー。

    持好奇心と向上心にあふれ、日々新しい治療法を模索している。

  • 脊髄小脳変性症

    小脳を中心とした神経の変性による疾患を総称して脊髄小脳変性症(SCD)と言います。

    脊髄小脳変性症(SCD)は、多系統萎縮症(MSA)、皮質性小脳萎縮症(CCA)、脊髄小脳失調症(SCA/SCAR)の3つに分類されます。

    このページでは、脊髄小脳変性症の中でも、多系統萎縮症を除く脊髄小脳変性症の治療法について解説しています。

    多系統萎縮症の治療法については、【こちら】をご覧下さい。

  • 脊髄小脳変性症(SCD)の保険診療による治療法

    現在の保険診療において、皮質性小脳萎縮症(CCA)、脊髄小脳失調症(SCA)を根本から治す魔法の薬はまだありません。

    しかし、今の生活の質(QOL)を最大限に保つための「対症療法」と「リハビリテーション」という基本的な治療の選択肢が用意されています。

    脊髄小脳変性症の鍼灸治療に取り組む鍼灸師 吉池 加奈

    1. 小脳の働きを助けるお薬(TRH製剤)

    歩行のふらつきや、呂律(ろれつ)の回りにくさといった「小脳性運動失調」に対しては、小脳の神経伝達を活発にするお薬が保険適用として認可されています。

    セレジスト(経口薬)

    1日2回飲むお薬です。歩行障害の軽減など生活の質の改善に役立つことが多く、長期的な処方が可能です。

    ヒルトニン(注射薬)

    点滴や筋肉注射で用いるお薬です。

    脊髄小脳変性症のお薬を飲んでいる患者さん画像

    2. 随伴症状を和らげるお薬

    SCAの型番によっては、小脳以外の神経にも症状が出ることがあります。これらに対しても、保険適用の薬で対応することができます。

    足のつっぱり(痙縮)

    筋肉の緊張を和らげるお薬(ミオナール、テルネリン、リオレサールなど)を使います。重度の場合には、お腹にポンプを埋め込んで脊髄に直接薬を届ける「バクロフェン髄注療法(ITB)」という治療も保険適用で行えます。

    パーキンソン症状

    体の固さや動作の鈍さには、L-dopa製剤などの抗パーキンソン病薬を使います。

    自律神経の乱れ

    立ちくらみ(起立性低血圧)には血圧を上げるお薬(メトリジン、ドプスなど)、頻尿などの排尿障害には膀胱の働きを調整するお薬(ポラキス、バップフォーなど)を用います。

    3.リハビリテーション

    お薬以上に重要になるのがリハビリです。

    近年の研究で、静的・動的バランス訓練や歩行訓練などの「短期集中リハビリテーション」を数週間行うことで、運動失調や歩行障害が改善し、その効果が半年以上も持続することが実証されています。

    介護保険や医療保険を使って、訪問リハビリや通所リハビリを継続することが進行を遅らせるカギになります。

    フレンケル体操をする脊髄小脳変性症の患者さん画像
  • 脊髄小脳変性症(SCD)の保険外治療と最新の取り組み

    日本の保険診療(健康保険)ではまだ認められていないため、自由診療(自費)や臨床研究などの枠組みになりますが、普通の人がアクセス可能な最先端の治療や、東洋医学的アプローチも存在します。

    脊髄小脳変性症の鍼灸治療に取り組む鍼灸師 吉池 加奈

    1. 反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)

    特殊なコイルを使って頭皮の上から磁気で脳(運動野や小脳)を刺激する治療法です。

    保険適用にはなっていませんが、一部の大学病院やクリニックで研究の一環や自由診療として行われています。

    患者さんによっては、「歩きやすくなった」「言葉がはっきりした」といった症状の改善が一定期間持続することが報告されています。

    ロボットスーツ「HAL」による歩行運動療法

    患者さんの皮膚から漏れ出る生体電位(運動の意図)を読み取り、歩行をアシストする最先端のロボット治療(サイバニクス治療)です。

    筋萎縮性側索硬化症などで保険適用が始まりましたが、脊髄小脳失調症への適応はまだ限定的です。

    HALを装着して正しい歩行動作を繰り返すことで、脳や神経のネットワークが再構築され、HALを外した後でも歩行パターンが改善する(歩幅が広がる、ふらつきが減るなど)効果が確認されています。

    鍼灸治療(東洋医学的アプローチ)

    脊髄小脳変性症の鍼灸治療は保険適用外のため、自費診療となります。また、鍼灸院ごとに治療法も検査方法も異なります。

    遺伝子の異常そのものを治すことはできませんが、鍼灸治療は筋肉の過度な緊張や異常感覚を和らげ、自律神経のバランスを整えることで、全身のコンディションを底上げします。

    小脳には残された機能を再構築する力(可塑性)があり、鍼刺激がその働きを引き出すことが期待されています。

    リハビリテーションと組み合わせることで、その効果をさらに高めることができます。

    当院では40年にわたり脊髄小脳変性症の鍼灸治療に取り組み、サーモグラフィやエコーによる客観的な検査をもとに、おひとりおひとりに合わせた治療を行っています。

    また、治療後に歩行練習やバランス訓練を組み合わせることで、残された神経機能をより効率よく活用できるよう取り組んでいます。

    詳しくは、当院と他の鍼灸院との違いをご覧ください。

    脊髄小脳変性症の鍼灸治療に取り組む鍼灸師 吉池 加奈
  • 参考文献

    • 運動失調の見方、考え方-小脳と脊髄小脳変性症中外医学社
    • 小脳と運動失調 小脳はなにをしているのか中山書店
    • 脊髄小脳変性症マニアル決定版!日本プランニングセンター
    • 脊髄小脳変性症のリハビリテーション -新しい治療戦略から緩和ケアまで-医歯薬出版
    • 神経内科2013 神経内科診療における鍼灸治療科学評論社